商標の権利は商品・サービス単位である

無事審査官のお眼鏡に適った商標は登録される 登録されると登録番号が付いて 出願人は商標権者になる ちなみに出願をすると出願番号というものが付くけど それは単なる受付番号であってこの登録番号とは価値が全然違う 間違わないように!

権利者になると何がいいのかというと その商標の使用を独占できるっていうことだ つまり他人が勝手にその商標を使ったら 「使うな」とか「カネよこせ」とか 「いい子にするなら使わせてやる」とか 「お前はクズだ」とか言える

だけど無制限にそんな暴君が許されるわけじゃない

権利の範囲は書類に列挙した商品・サービスに限られる 当然だよね 仮に誰かが「JAVASCRIPT」という商標の権利を持っていて その書類には商品として 「電子計算機プログラム」だけが記載されている場合 君が「電気式ワックス磨き機」とか「映写フィルム」とか 「電線」とか「犬笛」とかに 「JAVASCRIPT」という名称を付けて商売を始めても その権利者は一切文句を言えないので 君は安心して商売を続けることができるというわけだ

具体例を見てみよう

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ここでこの権利の商品は「電子応用静電複写機用感光ドラム」 「コンピュータプリンター用感光体ドラム」となっている 従ってこれら以外の商品・サービス 例えば「コンピュータプログラム」について 「Ruby」という商標を使用する行為は原則権利の外の行為になる ちょっと歯がゆい言い方をしていて申し訳ないけど その理由は先を読んで納得してほしい

でも注意すべきことがある 法律は基本的に権利者寄りであることと 権利者は基本的に強欲であるということだ

つまり商標の権利はその商標その商品・サービスだけじゃなく それと同じような商標同じような商品・サービスにも及ぶ > > (侵害とみなす行為) > 第三十七条 >  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。 > 一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用

また「類似」だ 商標の類似というのが相当厄介なものであることは前にも書いたけど 商品・サービスの類似っていうのもそれに劣らず厄介な代物である これで本一冊書ける なお「みなす」ってのは 「オレ(法)がそう決めたんだからそうだ。反論一切ナシ!」ってことだ

商品・サービスの類似に関しては 国際条約で定められた「類似群コード」というのがある 世の中の各商品・サービスには大体 この類似群コードというのが振られていて 商品・サービスの類似に関して 1つの類似群コードに属する商品・サービス同士は 審査においてはもっぱら類似と判断される

具体的に見てみよう

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ここにある > > 【類似群】 42P02 42X11

というやつが類似群コードだ

そしてこの類似群コードに含まれる商品・サービスが 同じような商品として判断される可能性がある範囲だ 類似群コードに含まれ得る商品・サービスは 特許庁のサイトで調べることができる1

ちょっと話がややこしくなってきたけど もう少し辛抱してほしい さらに厄介なのはこの類似群コードを超えて 類似の範囲が及ぶと判断される場合があるということだ

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備考を見てほしい 「電子計算機用プログラム」の類似群コードは 11C01なんだけれども この42X11の「電子計算機用プログラムの提供」に類似 と判断される可能性が高い

そしてさらに一つ厄介な話を付け加える 類似群コードというのは基本的に特許庁における審査の指針であって 実際の紛争があった場合に裁判所が これをどう判断するかはわからない つまり裁判所は類似群コードに拘束されない!

あーもうやめよう! ここで類似を理解するのは諦めて! 紙面の無駄だよ

「類似」という概念は商標制度における迷宮だ プログラミングにおける「文字コード」のようなもの と言えば済むだろう 専門家だって意見がばらばらだ

1つだけ覚えておいてほしいのは 「類似」というのは究極的には 「消費者がその商品の提供元を取り違える可能性」 つまり「A社の商品だと思ってB社の商品を買っちゃうかも」 の範囲を追求する概念だということだ

したがって現状でこの「類似」という厄介な代物に 僕たちができることは 代理となる専門家に業界の常識を正しく理解してもらう努力 彼をenergizeさせる努力 そして 裁判官 審査官そして権利者の 適切な判断への良識を祈ることだけだ

次に権利者は基本的に強欲であるということを説明する

世の中には無数の商品・サービスがあるけれど 特許庁ではそれをおおまかに45の区分に分けて 各区分に属する商品・サービスを適当に例示してる2 それを商品区分っていうんだけど 基本的に出願はこの単位で行われていて3 その区分内であればいくつ商品・サービスを選んでもいい また複数の商品を含む上位概念的な用語を使ってもいい

こんなルールの下 君が出願人だったらどうする? そりゃ可能な限りの商品・サービスを選ぶわな 将来その商品についても使うかもしれないし

現実に多くの出願人はそういう判断をする さあ現実を直視して

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「電線」にJAVASCRIPT? 「犬笛」にJAVASCRIPT? ええ、そりゃ有りうりますよ、確かに…でもねぇ 犬笛って…

そんなわけで以上をまとめると 商標の権利は商品・サービス単位である けれどもその範囲は あなたが思っている以上に広いということだ

(次回に続く)

  1. 類似群コード: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/ruiji_kijun9.htm
  2. 商品区分: http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/ruiji_kijun9.htm
  3. 追加料金を払えば複数区分を含んで出願可能である


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